母ちゃんは、いわゆる老人ホームに入所したことが一度もない。ないというよりも、僕がさせなかったのが本当だ。
それは母ちゃんが「姥捨て山みたいな養老院には絶対に行かない」を、70歳の頃から何かにつけて言っていた。その意思を守ってあげるのは、きょうだいの中で僕しかいなかったのも事実である。
させなかった理由の一つ。母ちゃんが、介護養老型医療施設の、大浜第二病院 療養病棟に一時入所したとき、同施設にいた高齢者たちの寂しげな光景をまざまざと見せつけられたことにもある。
僕は母ちゃんの世話をするため、豊見城市内の大浜第二病院 療養病棟へ欠かさず通っていた。通うと、入所している高齢者たちにあれこれ話し掛けるし、また掛けられる。
誰もが「美容室にも行けなくなった」と不満を言う。男の僕でさえ、見るに耐えない老人カット。
高齢者自身の願いで、短くしている訳ではない。大浜第二病院側の都合であるのは確かである。
入浴ではシャンプーの手間がかからないし、母ちゃんも命令のように老人カットにされていた。
介護現場にいる女性スタッフは、高齢者の伸びかかった髪や、ブラシもしていそうもない髪を見て何も感じないのだろうか。
スタッフは、それなりの髪型や化粧にも気を使っているはずだ。満面笑顔で話し掛けても、そこには人生経験が生かされていないと思える。
話しに加わっていない高齢者の納得いかなそうな顔。それでも娘や息子は自分の親を、医療施設や居宅介護支援事業所の老人ホームに入所させたいのだろうか。
要介護度5の高齢者にも、その気になればパーマをかけてあげられる。例え、どんなに気軽に集まる場所があったとしても、こぎれいにしてないと出かけたくないもんだ。
そういうことに気がつこうともしない育児世代が蔓延っていて、嘆かわしい世の中になりつつある。
僕に「沖縄はハイビスカスが似合う、日本一暗い県だよね?」と、大笑いさせてくれた東京帰りの知人夫婦がいる。
返しに「沖縄は作り笑いが似合う、日本一寂しい介護現場だよね」と超笑いさせてあげた。沖縄タイムスで連載した『いつも母ちゃんにアイ・ラブ・ユー』に理解を示してくれた知人。
沖縄タイムスの本日付くらし面『シリーズ介護保険 しまで生きる』。掲載写真を見た知人は、寂しい介護現場に不快感を表しているころに違いない。
介護現場では誰が主役かを知ろうともしない、学芸部くらし報道班(現システム局コンテンツ部副部長
http://bit.ly/ywvFI9)の男性記者。署名入りで書いた記事はピンが甘く、焦点もボケていることに気が付いてほしい。
上記の記事は
2006/05/17 20:05に作成。
強制削除された元ブログ『I-LOVE-NOBUKO』から復元した。